少し前に書いた「業績回復株の投資のタイミング」の記事で、業績回復株はどのタイミングで投資したらいいのか?を検証しようと思ったので、一つ実例を挙げて考えてみたいと思います。


今回はEMシステムズが業績回復した時に株価がどのように推移したかを検証していきたいと思います。
個別企業の回復の仕方によって株価の推移は異なるのですが、具体的な企業の業績回復時の株価推移をケーススタディーすることで、ちょっと考えてみたいです。


さっそく始めて行きましょう。


まず、EMシステムズという会社は、ざっくり言うと「薬局に対してレセプト(薬局が国民健康保険などの保険請求をする際の計算をするコンピュータやシステム)を販売する会社」です。

下の図.1の株価の推移(赤の矢印が上方修正、青の矢印が下方修正、黄色の矢印が自社株買いです)を見てもらうとわかるのですが、この会社、2006年12月頃をピークに約8分の1まで株価が下落しました(図.1 2006年から2012年までの株価の推移 aの部分)。

EM株価の推移




2006年から始まった下落の原因の一つは、好調だった業績に陰りが見えてきたことです。
売上が2006年、2007年と四半期で2,500百万~3,000百万円台だったのが、2,000百万台に急落して(図.2 四半期ごとの売上の推移 bの部分)、利益も赤字に転落しました(図.3 四半期ごとの利益の推移 cの部分)。

EM売上の推移



これは、フロー型だった売上構成をストック型に変更したために大赤字に転換したことが大きな原因です(ライブドアショックと重なったってこともあります)。また、急に不動産投資をはじめて借入金が増え、一気に財務が悪化たことも原因に挙げられます。

不動産購入による借上金の増加で有利子負債が急増しています(図.4 四半期ごとの有利子負債、純資産、総資産の推移 dの部分)。図では、示していませんが、70%弱あった自己資本比率は30%台まで落ち込み、赤字は5億を超えてるんですよね。

EM負債の推移




このような会社をみると、「この会社も本業に苦しくなってついに不動産に手を出したか」って考えてしまうもんです。



普通に考えるとこの時期に投資するのは難しく、株価が8分の1まで下落するのもよくわかります。また、この赤字の時に中期計画を立てているのですが、かなり強気の計画で現実味が薄く感じるような計画でした。こういったところも信用しにくかったんじゃないかと思います。 この赤字は、事業構造の変換(フロー型→ストック型)が進むまで、約3年間(2007年~2009年)続きます(図.3 四半期ごとの利益の推移 eの部分)。

EM利益の推移




その間はもちろん売上が落ち込む一方で、利益が出せずに赤字が出続けました。有利子負債は減ることなく、赤字の垂れ流しで自己資本は減る一方。下方修正も続いて株価は低迷を続けました。


まさに、で書いたとおり。①赤字が止まらない②収益の目処が立たない③財務が悪い状態でした。


そんな中で、2010年6月に一つの転機を迎えます。
三菱商事が薬局事業を11億で買いとって事業提携を結ぶ話がIRされます。
特別利益として10億円を計上し、有利子負債が急減(図.4 四半期ごとの有利子負債、純資産、総資産の推移 fの部分)。30%台前半だった自己資本比率が40%台まで回復しました。

EM負債の推移



③の財務が悪い状態がここである程度解消されます。


でも、株価はあまり反応がありませんでした。事業売却のような特別利益では継続性が見られないためだと思われたのでしょう。もっと言うと、稼いでいた事業を売却してしまったので、来年度以降にちゃんと利益が出せるか心配になるんですよね。財務状態も倒産が心配されるほどに悪い状態ではなかったですから。


そして、個人的にはここが大きな転換点だったのではないかと思うのですが、この事業売却の利益の年に、大きめの減損損失を出します。そのことで有形固形資産が減少し、減価償却が減りました(図.5 四半期ごとの有形固形資産、無形固形資産の推移 gの部分)。減価償却が減ったことと、ストック型への変換も浸透して2011年代には売上が2,000百万台でも黒字になるような体質に変わってきます。

EM有形の推移


①の赤字体質を事業の売却と減損損失によって改善されてきます。


2011年代には売上も上がってきます。見た目の売上は変わりませんが薬局事業を売却したことを考えると、システム販売で利益が出せる体制になったことが見て取れます。

ここにきて、ようやく②の収益の目処が立つようになりました。


しかも今回はストック型の売上なので大きな変動が少ないという利点もあります。安定経営と言った意味では変革前よりいい会社になったと言ってもいいくらいです。 でも、それでも株価の反応はあまりありませんでした。会社は自社株買いを繰り返しますが、株価に大きなインパクトを与えるには至りませんでした。

EM株価の推移2


ここらへんで株価が上がってもいいと思うんですけどね。


そして2011年3月の上方修正で株価が動き始めます。取引先である薬局が次々と上方修正を出していたので、EMシステムズの事業環境はとても良好であったことは推測ができます。そういった意味ではこの上方修正は結構予想することは可能だったのではないかと思います。


ザーッとみていきましたが、EMシステムズの例からは、財務が改善されて、赤字体質が解消されて、収益の実績ができたとしても、株価はなかなか反応しないのが見てとれます。


2011年度などは、黒字で、財務も回復しているのに全然株価に反応しない時期が続きました。それほど、一度信頼をなくした企業が信頼を取り戻して株価に反映されるのは時間がかかるんではないでしょうか?この時期に投資できていれば十分なリターンが得られたことになるんですよね。


そう考えると、業績回復株に投資するときには、これでも上がらないの?ってくらいまで待っても遅くはないような気がしています。



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