今回は、気合を入れた企業分析の記事を書いてみたいと思います。初めての試みなので上手く書けるかどうか?


かなり長くなりますので、時間がある時にでも読んで見てください。



今回取り上げるのは、自分の持株の主力銘柄の一つであるアテクト(4241)についてです。


アテクトは製造業に位置する会社で、主に半導体部門、衛生材料部門、PIM部門(噴射成形)の3つ部門で製造販売を行っている会社です。


この辺、一つの破壊的イノベーションで社会をひっくり返すような会社ではなく、 3つの部門でバランスを取りながら企業経営を行っていく、ベンチャー企業というよりは、中小企業の意味合いが強い会社です。
よく言えば安定している、悪くいうと爆発力に欠けるといったところでしょうか?


安定しているとは言っても、実はアテクトという会社は新規事業立ち上げの遅れやら、半導体部門の落ち込みやら、従業員の使い込みやらで、ここ最近はかなり危ない状態にありました(あります?)



しかし、ここ1、2年で「コンヤガヤマダ」状態は脱したと思えるような状態になってきたので、今回はその改革ぶりを事業構成の観点からみて行こうと思います。


さて、アテクトは製造業に位置しますので、一般的な製造業の事業構造を図に示します。以下のような形です。

 製造業の事業構造









研究開発から始まって、生産・流通→マーケ・販売→サービスと事業は流れており、
全般にわたって資本政策が絡んでくるといったテンプレートです。


そして、アテクトはここ最近の改革で、各事業で多くの部分にメスを入れて改革を行なっているのがみて取れるようになりました。以下がどの部門でどこに手をつけたかの図です。


アテクトの事業構造改革











研究開発はPIM事業で、生産物流は半導体事業で、マーケティング販売アフターサービスは衛生材料事業でと、あらゆる部門で改革を進めている状態です。

実はここ最近、その改革がBSやPLに現れてきているように感じます。ここら辺分析してて面白いなぁっと思ったので、今回記事にしてみました。


一つ一つみていきたいと思います。



先ずは研究開発から。

研究開発では、今まで新規事業として行なっていた、3つの事業、プラスチック造形、ポリマー微粒子、PIMのうち、二事業を閉鎖もしくは売却し、PIMのみに特化するこことなりました。

この三事業はずっと赤字を出しっ放しだったので資金繰りが難しくなった段階では英断だったと思います。


そして、以下のグラフのように、残したPIM事業は順調に売上を伸ばして、黒字化を達成。まだまだ売上的には小さいですけど、改革の成果がみて取れます。



PIMの売上推移













次に、製造物流では、半導体事業にメスを入れます。国内工場を閉鎖し、韓国と台湾に生産を特化させました。円安で、タイミング的には微妙ではあったのですが、この改革によって、棚卸資産回転率が目に見えて改善することとなりました。



グラフで示したので確認してください。折れ線グラフの部分です。


アテクトの販間費と棚卸資産回転数















この期間、実は売上もだだ下がりだったのですが、それにも増して棚卸資産回転率が改善しています。この生産改革、次は衛生材料事業で行うとのことで、どんな成果が出るのか楽しみです。



そして最後のマーケティング販売、アフターサービスでは、衛生材料事業からメスを入れます。



実は販売に関しては、半導体事業でスペーサーテープという、ニッチな分野ではありますが、世界シェア70%を記録するなど、実績は十分ある会社です。



それで、衛生材料事業。元々この衛生材料の販売方法はユニークで、テレマーケティングによる直接販売をおこなっていました。

それを今回は過去に注文をもらった先で、今しばらく注文がない先に、再度電話でアプローチするという、いわゆる見込み客販売をしたんです。そして、実績が上がってきます。



それは数字にも現れており、上の図の棒グラフをみると、販売管理費の額が減っているのがわかるかと思います(実際は販売方法の変更以外の影響も販管費の削減には効いているでしょうけどね)



こういった各部門・事業での改革に加えて、資本政策でもここ1、2年で大きな改善が見られています。



資本政策といえば、なによりアテクトは資金繰り的にみてそんなに万全ではない会社であるので、先ずはキャッシュフローからみてみたいと思います。


ここ三年のキャッシュフローをグラフにしてみました。


アテクトのCF推移











図を見てもらうと、まず、営業キャッシュフローが伸びてきているのが見て取れます。これは、利益をあげられるようになったのもそうなんですが、棚卸資産の削減などキャッシュを作れるような改革の成果でもあります。

そして、財務CFがここ2年はマイナスとなり、3年前(+それ以上前)に借入れた借入金を返済している様子が伺えます。



アテクトのCF文武












もう少し詳しくCFをみていきます。ここ三年の営業CFを横軸に、投資CFを縦軸にとると、三年前と比較して、営業CFが伸びているのがわかるかと思います。そして、投資CFも抑え気味で、前期は固定資産の売却もあってプラスになりました。
過去の投資を営業CFに結びつけて、かつ、資金繰りが改善しているのがみて取れるのではないでしょうか?



次に有利子負債と自己資本比率をみても、最近は有利子負債の減少が進み、自己資本が改善しているのがみて取れます。

アテクトの資本政策(安全性)














また、流動化率をみてもようやく100%を超えてきて少しは安心して見られるようになりました。まだまだ何かあったら危ない状態ですけどね。


アテクトの流動化率










また、有利子負債の年齢も長期に傾いてきて、長期固定適合率(固定資産を自己資本と固定負債を足した数で割り算)なんかも、順調に改善しています(グラフはなし)
 


こうやってみてくると、アテクトはここ1、2年で様々なところで大きく改革を実行して、その成果が数字として現れてきたと思います。


まだまだ万全ではありませんが、投資するにはいいタイミングなんじゃないかなぁなんで思う、今日この頃です。


いいことばかり書きましたが、まだまだ自己資本比率も低く、決して万全の会社ではありません。半導体事業がこの半期程、売上や利益が頭打ちになっているのも気になります。また、気をつけてはいますが、データが正確ではないかもしれません。投資は自己責任でお願いします。


初めての試みでしたが、上手く伝わったでしょうか?やってみて、分析結果を文章で伝えるのはこんなにも難しいものだと実感しました。アナリストの人ってすごいですね(今ちょっと話題になってますけど)。


今回の記事を書いてみて、思ったより面白かったので、また気が向いたら(もし需要があれば)書いてみようと思います。



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